東埼玉バプテスト教会




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『ペスト』名言A



サムエル記上12:24「あなたがたは、ただ主を恐れ、
心をつくして、誠実に主に仕えなければならない。
そして主がどんなに大きいことをあなたがたのためにされたかを考えなければならない。」

コロナと共存する世界をいかに生きるかが問われている中で、フランスのカミュの小説『ペスト』が読み直されています。舞台は1940年代のアルジェリア、感染症ペストが発生したオランという港町です。
ここで隔離された市民が不条理・災厄のシンボルであるペストに抗います。カミュは信仰者ではありませんが、神や信仰・聖書を全否定しているわけではなく、むしろ信仰者の立場を認めながら、別の立ち位置にいる自分の思想を、登場人物たちに語らせています。そこに見られる真理について、特に私が共感し、御言を思いめぐらすきっかけになったいくつかの台詞・言葉を何回かに分けてご紹介します。その第2回です。

「こんな考えは笑われるかも知れないが、ペストと戦う唯一の方法は、誠実さです。」「誠実さって、どういうことです?「一般的にはどういうことか知りません。しかし、私の場合は、自分の仕事を果たすことだと思っています。」主人公の医師リウーの言葉です。リウーは状況を見極めた上で、ただ自分にできることをするという、地に足の着いた全うな倫理で、医師としての自分の職務を果たしていきます。決して彼は英雄を目指していたわけではありませんでした。物語には、この主人公のように、ただ自分にできることをするという「静かな美徳」を備えた、「とるに足らない地味な」グランという下級役人も登場します。彼は凡庸な人物でありながら、保健隊の事務の要の役割を果たしていきます。
現在のコロナ禍の中で、コロナを恐れず、淡々とやるべきことを誠実にやっている方々がいらっしゃいます。そのような方々のおかげで、非日常なのに、私たちは日常生活を送ることができています。

昨年、京都アニメーション第1スタジオが放火され、36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件で、先日、青葉真司容疑者が逮捕されました。命に別条がない程度まで火傷が回復したためですが、その火傷はもともと回復の可能性がほとんど見込めないほどの酷い状態だったそうです。しかし担当医師チームをはじめとする医療従事者たちの尽力によって、奇跡的に回復しました。担当医には「なぜあんな人間を救うのか」という抗議の声が届いたり、「彼を殺すために助けるのか」と自問したり、その狭間で苦悩したりしながら、チームとして青葉容疑者の治療に全力を尽くしていったそうです。担当医の一人は次のように語っています。「被害者があれだけたくさん亡くなったのに、『なんで加害者を救うんだ』と思う方がいるのは、分かっています。ただ我々医療者が考えるのは、目の前の患者さんのことだけです。他のことは関係ありません。」これこそ誠実そのものです。

では私たちがこのコロナ禍でできることは何か。自分の仕事を果たすという時、そもそも自分の仕事とは何か。祈りのうちに、礼拝のうちに、自問自答していきましょう。そのために、私たちそれぞに与えられている信仰と賜物、さらには再臨の主を待ち望みつつ歩んでいる恵みの管理人であることを前提にして、考えていきましょう。

詩篇26:1「主よ、わたしをさばいてください。わたしは誠実に歩み、迷うことなく主に信頼しています。」,26:11「しかしわたしは誠実に歩みます。わたしをあがない、わたしをあわれんでください。」