東埼玉バプテスト教会




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『牧師といのちの崖』



先日、公開されたばかりの『牧師といのちの崖』を観て、主人公であり、実際に今も奉仕されている藤藪庸一先生(白浜バプテスト基督教会牧師、特定非営利活動法人白浜レスキューネットワーク理事長)の講演を聴いてきました。白浜と言えば、観光名所である和歌山県の三段壁(さんだんぺき)がありますが、ここは東尋坊と並ぶ自殺の名所。藤藪先生は人生に絶望してやって来る人たちに声をかけ、帰る場所のない人々に教会を開放し、共に生活しながら生きていく方法を真摯に探っています。
藤藪先生は着任以来ずっと、前任の牧師が始めたこの働き、すなわち自殺者救済活動(直接関わった自死念慮を持っている方々の数だけで900人を超える)、生活自立支援、自殺予防策活動に取り組んでいます。さらには、「自殺に至る生きづらさを抱える過程において、子どものころ、周囲に助けてくれる大人がいたか、いなかったかで大きく違ってくる」とのことで、子どもの学習サポート等、子どもへの支援もしています。2012年にはNHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』という番組でも特集されたことがあります。
映画と講演からよく解った藤掛先生の姿は「覚悟」という言葉でまとめることができます。コンタクトを求めている人全員と毎回深く関わるわけではなく、一度限りの機会に、ただただ共感しながら傾聴するだけのこともあるのですが、徹底的に関わり続けると決めた時の覚悟がすごいのです。徹底的に目の前の相手を信頼する覚悟。決してあなたを見捨てないという覚悟。叱る時も多いのですが、そんな時でもどこまでも愛を動機として叱り続け、重荷を共に背負う覚悟。
先述の『プロフェッショナル仕事の流儀』では、藤藪先生のこだわりの流儀として「最後のSOSに、向き合う」「まずは、100%信じて聴く」「何があろうとも、生涯寄り添う」「自分の価値観は曲げない」等が、なるほどと納得するばかりのことが次々に上げられていきます。しかし一方で、最後に「プロフェッショナルとは?」と問われて、「自分のダメなところ、足りないところが本当に分かった時に、それをちゃんと認めて、それでも諦めないで、次にまた向かっていく、また成長していこうとする、そのような人」と回答するのです。たいへん正直な方で、弱さを隠そうとせず、決してスーパーマンタイプではなく、誠実に命に向き合っていく姿に感動しました。
藤藪先生の映画はもともと2/1(金)までの限定公開となっていましたが、あまりにも好評につき、一気に公開期間が1ヶ月も延長、3/1(金)までポレポレ東中野にて上映され続けることになりました(2/2-8は休映)。著書もありますので、ぜひ一度、その働きの様子・情報に触れて下さい。私たちの教会と人生の使命である福音宣教が、命のために、どれだけ重要で尊い働きなのか、再確認する機会になることでしょう。
先日、2018年の自殺者数が20598人と発表され、9年連続で減少したとのことです。しかしそれでも毎日50人以上が自殺していて、未成年女性に限れば、昨年よりも増加しているのです。そのような状況ではなおのこと、一番の自殺予防は福音宣教です。その上で、近くにいる、生きづらさを抱えている一人ひとりに届く信仰と言葉を持って、今週もそれぞれの持ち場に出て行きましょう。